タイトルなしの物語



「私…どうしたの?」


「うん…過呼吸だって」


過呼吸…私には初めて聞く言葉だった。


「朱莉ちゃん、おはよう」


紫苑と一緒にお医者さんが入って来た。


「…おはようございます?」


私は時計を探した。


「今は朝の10時だよ。朱莉ちゃん、ずっと寝てたから」


お医者さんは面白そうに言った。


「さ、診察するから男は出て行きなさい」


「えー、いいじゃん」


「そうだよ。俺ら幼馴染だし」


2人はそう言って反抗したけど、お医者さんの厳しい視線に負けて出て行った。


「朱莉ちゃんは太陽くんのおかげで助かったんだよ?」


お医者さんは聴診器を耳につけながら言った。


「太陽くんね、救急車が到着するまでの間、ずっと人工呼吸をしてくれてたんだ」


「太陽が?」


「うん。それがなかったらきっともっと大変だったよ」