タイトルなしの物語



「あ…っ」


六○亭に着くまでに通り過ぎようとした店で、私はある物を見つけた。


「ん?マリモ?」


私に気づいた瑞恵が立ち止まり、紫苑も立ち止まった。


「寄ってく?」


紫苑はいつもこんな感じで優しい。


太陽とは大違い!


「でも…六○亭も私の言いだしっぺだし…」


「気にしないの!私だってお菓子買いたいもん」


瑞恵までこう言ってくれた。


お母さんには「マリモも買えたら買ってきてね」って言われたの。


「じゃあ…ありがとう」


私はそう言って店に足を踏み入れた。