ここは華加高校。私は今日から、この学校の二年生になる。


まず校門を通過し、新クラス発表、と書かれた名簿を見に行く。
どうやらわたしは2年3組のようだ。
「りな、一緒だね!」
後ろから声がしたかと思うと、去年同じクラスだった大沢優が立っていた。
「え、本当?」
嬉しくて、頬の筋肉が緩む。
「そうだよー。ほら、あそこ」
と、優が指さしをして自分の名前を見せてくれた。
「本当だ!やったね、一緒!」
すこし大きな声をあげてしまい、その場にいた先生に睨まれてしまった。
そんなことすらおかしく思えるくらい、うれしい出来事だ。
ふと、私の出席番号である17番の前、16番に目がいった。
「・・・海原・・・?」
「ああ、海原もこのクラスかあ」
「知ってるの?」
私は初めて聞く名前にどきりとしてしまった。
「うん。バレー部の」
「へえ・・・」
と、生返事を返す。あまり聞いても今はわからないし。
「とりあえず、教室いこっか」
優が可愛らしくにこりと笑う。
「うん」
私も微笑み返し、新クラスの3組がある4階へと向かった。


教室に入ると、すでに私の一つ前である海原くんが席についていた。
音をあまり立てぬように椅子を引くと、海原くんはこちらを振り向いた。
「あ」
つい、目が合い声がでてしまう。
「よろしく」
「よろしくね」
にこりと笑ってそう言い放つ彼は、とても幼い印象だ。
「海原くん、だっけ」
「ああ。海原空。ちなみにうなばらくんじゃねーかんな」
「あはは、わかるよそのくらい。私は、楠りな。去年学級委員だったんだけど、わかる?」
とは言ってみたが、学級委員(しかも委員長)だったにもかかわらず彼のことを知らなかった私はなんなのだろう。
「知ってるよ。委員長さん」
「あららー。ありがとう」
「今年もやるの?」
「ううん、今年はいいかなって」
「そう」
彼は眼鏡をかけていて、白くて綺麗な肌に黒斑がよく映える。
「海原くんて、バレー部だよね?」
「そうだよー。一応エース」
「え、そうなの!」
「はは、まあ知らねーよな」
そうだったんだ、と話がどんどん膨らんでいく。
なかなか彼は人懐っこいようで、とても話やすかった。
ホームルームも終わり、休み時間。
海原くんとはその後話すことなく、一日が過ぎていった。