あのこと―――
それは、あたしたちが付き合っていることだとすぐに理解した。


それを見ていた汐たちがビックリしたように、あたしに聞いてきた。


「あのことってなんのこと?」


まぁ、ビックリするのも当然のことだろう。
知らないことなのだから……


「はっ?なんのことかわからへん。聞いてみて。なんのことか」


あたしは焦ってしまい、とっさになにも知らないフリをしてしまった。


これでよかったのだろうか……?


本当のことを言ったほうがよかったのか?


そんなことを思ってもその言葉をなかったことになんかできず………。


「俺らが付き合っとること」


とうとう言ってしまった。


「えっ……。奈緒と颯馬くんって付き合っとるの?!」


だろうね。その言葉がくると思っていたよ。


「ちゃう!付き合ってなんかないし!」


あたしは最低なことをしてしまった。否定してしまった……。
ギリギリ、バレることはなく、なんとか危機は乗り越えた。