「…はい、じゃあ教科書68ページ、んー…結綺さん読んで」
「はい」
凛、と甘い、だけどとおる声で名前を呼ばれた結綺が教科書を読む。
俺はその後ろ姿をひっそり見つめていた。
黒く、艶やかな髪、白くて透けてしまいそうな肌、華奢な背中。
女の子らしい仕草。
何処と無く、まるで狙ってるかのように見えるほど男を惑わす彼女。
この間、電車のホームで話して依頼、俺たちは挨拶程度で会話を繋げていない。
…俺のこと、嫌いなのかなぁ。
電車の中でも生徒がいないか探してたし…みられたくなかったのかもな。
いままでの自分じゃ、信じられないくらいマイナス思考で女々しかったらしい俺…。
気になりはする。
好きじゃない。
嫌いじゃない。
