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数刻過ぎた今も、俺と愛は黙ったまま立ち尽くしていた。

気まずい…。

何か話すことはないかとちらっと愛を見たとき、足元を見ながら悲しそうな顔をしているのが目に入る。


あぁ、これだ。

足が痺れているから歩けないんだろう。

俺が座るように言えばいい。


直ぐ様行動にうつそうと、腕を組んだまま愛の側へ寄る。

「…愛」

ぼそっと話かけると、吃驚した顔で俺を見上げ小さく返事した愛。

「とりあえず…座ろうか。足、痺れているのだろう?」

よし、言えた。

「ありがとう…」

どこかぎこちない感じの愛を、俺の隣に座るよう促した。


ゆっくり腰をおろしたのを見計らい、ひとつ息をついた。


「小十郎が言っていた、話…はないのか?」

聞いてよかったのかは分からないが、愛は俯き加減で躊躇いがちに「…ある」と言った。

小十郎は、嘘を言っていなかった。

「言ってくれ」

「…うん」

何かを決心したように光を宿した愛の瞳が俺の瞳を捉えた。



「…」

いつ口を開くのかどきどきしつつ、ブラブラしている愛の細く白い脚を見つめていたとき。


「――…政宗さ」


いきなり喋りかけてきた愛に、心臓と共に体までびくっと跳ねた。

「え…大丈夫?」

「あ、や、全然大丈夫だ」

はははと苦笑いしてから、遠慮がちに「何だ?」と問う。


愛も、ふふ、と笑ったと思うときゅっと口を一文字に結んでまた難しい顔をした。


やはり、…昨日の事なんだな。