地面に投げ飛ばされたと思うと、後ろにいた誰かに受け止められた。
すっとその人に離してもらうと、あたしは咄嗟に池に落ちた人物に駆け寄る。
「…っ、小十郎っ!!!」
池に落ちた小十郎は、ひょいっと池からあがってきた。
「愛…」
髪をかきあげながらあたしを見つめる小十郎の怒りの籠った声色に、ゾクリと背筋が凍った。
「ごめんなさ…っ」
申し訳ない気持ちでいっぱいで泣きそうになる。
すると、小十郎は眉をハの字にさせて口角を上げた。
「…すまなかった。これは気にするな、こんなちょっとした事で怒らない」
ちょっとした事でも怒るくせに…と、ふと頭に浮かんで、自然と頬の筋肉が緩んだ。
小十郎はあたしに意味深に頷くと、政宗に「着替えてきます」と言って城へ入っていった。
――…
「…」
「…」
小十郎が庭からいなくなって数分立つが、一言も喋らないあたしと政宗。
政宗は、やっぱりあたしが嫌い?
不安な気持ちから、俯きそうになったとき、政宗が近寄ってきた。
「…愛」
「…はい」
小十郎が意味深に頷いた理由、これだ。
小十郎が着替えに行けば、ちょうど2人きりになるから、政宗本人に「何で目を逸らすのか」を聞けということなんだ。
「とりあえず…座ろうか。足、痺れているのだろう?」
一瞬何かに勘付かれたようにドキッとしながら、ゆっくりと頷いた。
「ありがとう…」
城の縁側に、2人並んで腰をかける。
「小十郎が言っていた、話…はないのか?」
「…ある」
…そうだ。
今、聞くしかない。
「言ってくれ」
「…うん」
あたしは勇気を出して、固く閉ざしていた心の口を開いた。
