恋の戦國物語


あたしはというと、相変わらず政宗に背を向けたままその場から動こうとしなかった。



…いや、正しくは、振り向くことができなかった。


拒絶されるのが怖くて。

あたし、こんなに弱かったかな…?


「…ふぅ…」

少しすると、小十郎の歩く足音がする。

「政宗様」

「…何だ」


何であたしは、“政宗がよく来ると言われているこの庭”に連れてこられる羽目になったんだろ。


…だいたい、政宗が此処にきたという時点で今すぐ逃げたいのに。



悶々とする中、することもないし、座っているからかいつの間にか足が痺れてきていた。


小十郎が政宗に何を言おうとしているのか耳を傾けたとき、小十郎が口を開いた。


「…愛が、政宗様に話があるそうで」


えっ…。



あたしが?
政宗に?

「…っ!!小十郎!?」


思わぬ小十郎の言葉に、ばっと振り向いて「何言ってんのよ!」と言おうと、勢いよく立ち上がった。



――が。


…フラッ

「きゃっ…」


立ち上がったと同時に、痺れていた足がもつれて池のある方に倒れ込む。


ヤバい…!
動揺し過ぎだし、足痺れてんのに、っ…あたし馬鹿だ…


体が宙に浮いたとき、思いきり目をぎゅっと瞑った。

「愛!」



…ッバッシャーンッ!!!



池に落ちた。



…のは、あたしじゃなく、あたしの名を叫んだ人物では“ない”人だった。


なん…で…。