何か話があって、つれてきたんじゃないのかなと思いつつ、話題を出してみることにした。
「小十郎」
「うん?」
「小十郎は、政宗の重臣なのに、政宗の側にいなくていいの?」
この質問にぴくりと反応する小十郎。
「あぁ。許可を得てきている」
「そう、なんだ」
一問一答だから、全然話が続かない。
…あたしから、何でここに呼んだのか聞いてみるべきかな?
あたしは顔だけ小十郎の方に向けて、「ねぇ」と問いかける。
「ん?」
きょとんとした顔で、いつものように返してくる小十郎。
やっぱり、気分的に何となくでここにあたしをつれてきたのかな。
「やっぱり、何でもない」
視線をまた鯉にうつす。
真っ赤な鯉と、赤と白の鯉がお互い交差するように泳いでいるのが目に入る。
すると、これからが本題なのか、小十郎があたしから少し距離をあけて隣に立った。
「政宗様は」
いきなり政宗の名前を出され、動揺して池に落ちそうになった。
本題は…やっぱり政宗?
「…政宗様は?」
聞き返しながら小十郎を見上げる。
太陽の眩しさで小十郎の顔はよく見えないが、空によく合う男だと思った。
「…この庭によく来るのだ」
「ふ、ふぅん。で?」
もっと深刻な話なのかとドキドキした。
小十郎はあたしを見下ろして、あたしと目が合う状態になった。
すると、またもや小十郎の次の言葉にドキッとする。
「昨晩の話の続きだが」
きっと、今度こそあたしが政宗に対して悩んでいる事の話だろう。
小十郎は躊躇いがちに口を開いた。
