政宗はぼうっとあたしの瞳を見つめる。

だんだん顔が近くなるなか、あたしは咄嗟に顔を背けようとした。

が。

「愛の目は…」

政宗はいつになく小さな声で、ポツリと呟いた。

綺麗な色をした政宗の目に捉えられ、あたしは顔を背ける事すら忘れてしまっていた。

あたしの目は…何?

「政宗…?」

恐る恐る名前を呼ぶと、政宗ははっとしてあたしの肩から手を離した。

「…すまん、何でもない」

政宗はそのまま俯く。

だが、俯くときの生気のない政宗の瞳を、あたしは見逃さなかった。

「…何でもなくないよね?」

「いや、気にするな」

政宗は顔をあげてあたしに微笑みかけた。

…じゃあ、どうして。


「――どうして…、そんな泣きそうな顔をしてるの?」

そう。
政宗は笑っているが、それは“全く笑えていない”笑顔だった。

何かある…。

政宗は、あたしの言葉を聞いたと同時に俯いたままの顔を歪めた。

目に…瞳に関係があるの?

どれだけ親しいからって、気安く相談にのれるような事情じゃないことは、政宗の表情からして分かる。

でも、第一政宗は史実からして弱音をはいたりするような人でもないから、余計に気になる。

あたふたするも、声をかけようと政宗の腕に手を伸ばした。

――ッ…

「…俺から呼んでおいて申し訳ないが、今は一人にしてくれ」

伸ばした手をするりとかわされ、目を合わせてくれないまま政宗は静かにそう言って奥へ行ってしまった。

あたし…何かした…?

「…失礼しました…」

あたしは、胸を締め付けられるような感覚に襲われ、遂に部屋を後にした。