って、はい?
化粧するんですか?
ちなみに、あたしは化粧品すら持っていなければ、化粧なんて産まれて一度もしたことがない。
「え、化粧するの?」
「如何にも」
はい、まじですか。
言い切りましたよ、この方。
しかも初めての化粧が戦国風の化粧ってどうなのよ…。
小十郎はそう応えると、襖を開けて出ていこうとした。
「え、で、あたしは?」
「ここで待っておれ」
小十郎はそのまま、すぅっと出ていってしまった。
「むー…」
何なのよ、もう…。
小十郎はさっきから目も合わせてくれないし、あたし、怒らせるような事をした?
まぁ…帯が結べずモタモタしていたのは事実ですけどね…。
とりあえず、襖の真逆の位置にある障子を開いて、外の空気を吸う。
「ふぁー…」
いいなぁ、ここ、ベランダっぽくなってるし。
いっそのこと、このベランダっぽいところに住みたいよ。
小十郎の態度に、モヤモヤしていたが、夜の城下町の灯りのお陰で癒されるように消えていった。
…――サワッ
「ん?」
たった今、風は吹いていないのに、真下の森の中辺りから音がした。
それも、周りが高校入試並みにとても静かだったので鮮明に聞こえた。
あぁ、多分そこ辺りに住んでいる動物かな?
何が住んでるんだろ。
内心わくわくしながら、もう一度城下町を見渡して障子を静かに閉めた。
…することがない。
着物だから座れるはずもなく、壁に寄りかかっている事しかできなかった。
ふぅ、と一息ついたそのとき。
