下着姿になり、一枚一枚ていねいに着物を広げる。

着物はさっきまでは気づかなかったけど、無地の白とオレンジ、柄入りのピンクの3着があった。

…綺麗――…。

生地も柔らかく、生地にすら詳しくないあたしも頬擦りしそうになるほどの滑らかさで、見るからに値段が高そうな上物。

こんな着物、あたしに似合うの?

とりあえずまず、薄い白色の着物を羽織ってみると、その生地の滑らかさが直に肌に触れ、全身に何とも言えない感触が自分を包み込んだ。

…気持ちいい――。

ついつい呟きそうになったが、口を閉じて、右を下に、左を上にして着重ねる。

こっちであってるよね?

襖の外近くに小十郎がいると気づき、小十郎に聞いてみることにした。

「小十郎」

「どうした、もう着付けられたのか?」

即返答してきた。

いや、まだだってば。

「まだだよ、着物って左が上だっけ?右が上だっけ?」

日本人のあたしがそんなことも知らないなんて、と改めて情けなく思った。

「…そなたの時代では右が上だったのか?」

かたかたっと襖から音がする。
襖にもたれ掛かっているのかな?

「いや、滅多に着物とか着ないから分からないだけよ」

右が上だったのか、と聞くと言うことは、左が上ってことかな?

「…左様か。あまり着物を着ないということなのだな。ここでは左が上だぞ」

ふむふむ、と左を上にしてしっかりと整える。

そして、今度はオレンジ色の着物、最後にピンク色の着物、と着重ねていく。