政宗に何か言われると思うと、自然とぎゅっと目を瞑ってしまう。

すると、政宗が腰を上げたのか、着物と畳が擦れる音がした。


もしかして…この部屋から出ていっちゃうのかな…。

怒らせちゃった…?
…どうしよう…!


――フワッ…

「…っ!」

すると次の瞬間、褥越しにフワッと抱き締められるような、包まれた感じがした。

耳元で政宗の声がする。

「そなたが帰りたいのはよく分かっている。申し訳なかった」

政宗が謝る、という予想外の展開に目を見開く。


「だが、ここにいる限りそなたの力になりたい…故、一人で悩まないでくれ」


弱々しい、でも心強い言葉。

何とも思ってないのに、何故か心に染みて涙がどんどん込み上げてくる。


「泣きたいなら、泣け。気が済むまで泣けばいい。今だけ…胸を貸してやる」


一人で潜っているという孤独心からか、政宗の声を聞くと褥の中から出て起き上がった。

そして、政宗の胸に飛び込むと子供の様に泣きじゃくる。


「…ふ…ぅ…っう…」


政宗は、あたしが泣いている間、何も言わずにただただ抱き締めてくれた。


――政宗は、温かかった。