一人でクスクス笑っていると、目の前にいた政宗が声をかけてきた。
「未来の物は面白いな。もっと、見せてくれぬか」
ここまで言われたら見せるしかないよね。
「じゃあ…」
器用に物を探っていくと、いつも使っていた“あれ”が手に当たった。
…え…、まさか!
それを掴むと、バッと取り出した。
「…携帯…だ…」
そう。
“あれ”とは携帯のこと。
――忘れてた。
あたしは…いち早く、元に世界に帰らなきゃいけない。
こんなところに居る暇なんて――…。
「ごめん、政宗」
突然、顔を真っ赤にして狂ったかのような目でフラッと立ち上がった愛に、政宗は驚く。
「どうした、おい、愛!」
政宗の声を妨げる様にガラッと襖を開くと、行く宛もないまま、携帯を握り締めて無我夢中で長く続く廊下を走った。
――…
「はぁっ…はぁっ…」
右手には折りたたみ式のピンクの携帯。
今まで…ずっと使い続けてきた、百合とのお揃いの携帯。
その携帯を急いで開く。
…いつもと変わらない待ち受け画面。
「百合…百合…」
電話帳のボタンを押して、百合の名前を探す。
「…あった!」
電話の発信ボタンを押して、右耳に押し当てる。
…お願い、繋がって…!
