「俺が軽々しく冗談を言うと思うか?信じる他に何がある」


政宗のはっきりした決断で、小十郎は黙り込み、あたしからは少し笑みがこぼれた。

やっぱり…案外優しい。


「とりあえず、行く宛がないのならここに住めばよい。小十郎、どうだ」

え…話…結構進んじゃってない?

…まぁ、とりあえず野宿になってしまうのは嫌だから、今日はお言葉に甘えよう、と黙りこんだ。


わざと顔色一つ変えず、小十郎の返事を待っていると、小十郎は躊躇いがちに「…無論」と呟いた。


「そうと決まれば愛。今から話を…」

「政宗様」

政宗がにっと笑いながら顔を近付けてくると同時に、襖の向こうから女の声がした。


政宗は少し、むっとすると顔を離して姿勢を正した。

「どうした」

自分と話していた声より少しトーンの低くなった声にドキッとする。


「何と声の低いこと。昼餉の時間ですよ」

政宗は、ぴくっと肩を動かすとぐっと立ち上がり、襖越しから聞こえるさっきの女性に返答する。

「あぁ。喜多だったのだな。今開ける」

そういって、政宗は自ら襖をゆっくりと開けた。

「…っ」