恋の戦國物語


「…当たり前であろう。一応言うが今、貴様を殺す気はない。…政宗様が殺せと言うならば問答無用だが」

また、すたすたと歩いていく小十郎についていくように、足が勝手に動く。


――…もう信じるしかないかもしれない。

ここは、戦国時代なんだと――…。



…城につくと、小十郎に頭をさげている門番らしき人がいて、何やら話している。

さっき、あたしが百合と見ていた米沢城とは少し違っていて、全体的に綺麗。

元々、こんな色をしてたんだ…。

今すぐ、帰りたいよ…百合…。

小十郎は、今にも泣き出しそうな顔で悲しげに城を見つめるあたしに、少し躊躇いながら話しかける。

「…おい。何処の者かまだ教えてもらっていないが、話は部屋で聞く。…入れ。しかし、もし異様な行動をしたり城の者に危害を加えたりしたならば、何があろうとそなたの命はないと思え」


そういって小十郎はすっと手拭いをあたしに渡すと、背を向け、城へとゆっくり歩き出す。


自然に小さな気遣いだと感じ、目頭が熱くなる。