言葉もなく手を繋ぎお墓から少し離れた河川敷を歩く。

少し歩いた先の河川公園のベンチであたし達は腰を降ろすと互いを求めるように抱きしめ合った。

あたしの不安が伝わるのか優しく髪を剥き宥めるように額にキスをする龍也先輩に何をどう話していいのかわからない。

それでも龍也先輩は戸惑いの表情を隠そうともせずあたしに無言で問い掛けてくる。

彼も不安なのだと思う。

昨日から急激に色々な事がわかって、自分を取り巻く環境にも変化が現れていくのを敏感に感じているようだ。


それでもその瞳の中には昨日までの人を拒絶するような冷たい光は薄らいでいる。

昨日までより格段に柔らかくなった微笑み、瞳に宿る温かな光。

彼はもうクールビューティなんかじゃない。

心を冷たく閉ざしていた厚い氷はもう溶け始めている。