翌日、一臣さんと信子さんに別れを告げ、あたし達はペンションを後にした。

帰る直前に龍也先輩が一臣さんに引き止められて何か話していたとき、あたしは信子さんに声を掛けられた。

渡したい物があると見せられたものは数十冊にも及ぶ大学ノートだった。

「これは…?」

「それは、さくらさんの日記よ。
彼女が翔さんと出逢ってから失踪前日までの毎日が書き綴られているわ。
彼女の無くした記憶の全てがこの中にある。
これは龍也君ではなく、あなたに渡しておきたいの。」

「これをあたしに?どうして龍也先輩じゃないんですか?」

「聖良ちゃん。これはきっと、あなたに必要な時が来ると思うの」