「いつかおまえが自分からそう言ってくれる日を翔はずっと待っていたんだ。
翔が死んでしまって、いつかおまえが知りたいと言って俺を訪ねて来たら教えてやってくれと言うのが、翔から託された遺言だったよ。」

「父さんの…遺言?」

「…タバコ、火をつけてもいいか?」

一臣さんは一言断ってから、先ほどから咥えていたタバコに火をつけた。

ふうっと吐き出す煙がゆらりと空気の層を作り部屋を流れていった。

「俺が聞いた事を全部教えよう。
だが辛いぞ?真実を知った瞬間からおまえは運命を背負う事になるだろう。
…二度と逃げられなくなる。
今ここで話を聞く前に決して後悔しないと誓え。
いつかおまえは何も知らなかったほうが幸せだったかもしれないと思うこともあるだろう。
だからこそ、翔はさくらさんがいなくなった事を、おまえに蒸発と教えたんだ。」

一臣さんのタバコを持つ手は震えて、声が擦れていた。