【中編】『Love Step番外編』星に願いを

「俺の両親は籍を入れていなかったらしいんだ。」

龍也先輩はポツリと小さな声で話し始めた。

あたしは彼の右手をギュッと握ると、頭を抱きかかえ自分の胸に引き寄せた。

彼の心が波立たないように願いを込めてあたしの鼓動を彼に伝える…。

龍也先輩は、あたしの鼓動に安堵したように瞳を閉じて、静かに話し始めた。

「この間パスポートを取った時に戸籍を見て初めて知ったんだ。
ビックリしたよ。
そんなこと考えた事も無かった。
突然母親が姿を消すまでは、とても仲の良い夫婦だったし、蒸発の一ヶ月前にようやく結婚式を挙げたばかりだった。
だからこそ俺は母親が突然消えたことが信じられなかったし、許せなかったんだ。」

龍也先輩はあたしの腰に手を回しギュッと抱きしめたまま、どこか焦点の定まらない目で遠くを見ていた。

たぶんその視線の先には記憶の中のお母さんが映っているのだと思う。