LOVE PRECIOUS



「早くに気づいてあげるべきだった。

そうすればお前はこんなに辛くなる必要はなかったんだ。」


ルカは背けていた顔をアイの方へ戻した。


「ルカさんが気に病む必要はないんですよ?

これは私の問題ですから。


それに…
もうその名は捨てました。」


「えっ…?」


「捨てたんですよ。

だから私は最強の海賊でも三銃士でもないただの平凡な海賊…。」


そしてアイは手元の紙をチラッとみた。


さっきの暗号の紙だよな…?
アイの手が少し震えてる気がするのは俺だけか?


「でも…

その平凡な海賊にはなれなかったみたいです。

この名を一度でも名乗った限りもう逃げられない。」



静かに淡々と言葉をつないでいくアイに俺はなんとも言えない気持ちになった。
何か引っかかる。
そんな感情。


そして…


「私は戦火の渦に巻き込まれる運命…」


もっと重要な事を隠している。
こいつの心の奥底にある闇の部分を…


「お騒がせしてごめんなさい。」


アイは紙をジェーンに渡して食堂を出て行こうとした。


「どこ行くんだ!?」

ナオが声をかける。


「甲板で空を見てきます。」

アイは俺たちに振り向きもせず静かに食堂を後にした。



「大丈夫かな。あいつ。」


アイが出て行った扉にボソッとナオが呟いた。


「大丈夫よ。
しばらくしたらかえってくるでしょ。」


「元はと言えばお前が原因なんじゃねぇのかよ!!」


ナオの呟きにしれっと答えたジェーンに腹が立って俺は怒鳴った。


「私は私の仕事をしたまでよ。

あんた達だって私が言わなければアイが何者でこの船に乗ったかもわからなかったじゃない。


それにあの子をこの船に乗せてる以上あんた達の身も危険だってことを覚えておきなさい。」


ジェーンは真っ直ぐ俺たちを見ていった。


でもその目の中には何というか…
悔しさや悲しみが現れていたきがする。


アイもこいつも何なんだよ…
俺達にどうしろっていうんだ?


「ちっ、
めんどくせぇ!


俺はあいつを見てくる…」


なんだかんだいって俺は心配だった。


あの状態だと海に投身しちまうんじゃねぇかと思うくらいだったからな。


手間のかかる女だ…


ナツキSIDE終わり