LOVE PRECIOUS




ハルSIDE



「大変なお姫様達だね。」


シンさんがお姉ちゃん達を出てった扉を見つめて笑った。



「全くだ。
アイが来てからいい事がまったくない!!」


ナツキさんは眉間にシワを寄せてコーヒーを飲んだ。


お姉ちゃんが助けた女の人はお姉ちゃんの昔の仲間だった。


ジェーンさんが私を見たとき一瞬。
ほんの一瞬だったけど憎しみのこもった目で見られた気がする。


それに…
ジェーンさんと話しているお姉ちゃんは私の見た事がないお姉ちゃんだった 。


私といるときも男の人みたいになるけどジェーンさんに対する対応は私に向けられるのと少し違う。


2人とも信頼しきっているような対応だった…


「ねね!
ハルちゃん?」


「はい?!」


急にルカさんに声をかけられてビクッと体が震えた。


「ごめんごめん!
考え事かな?」


「い、いえ!
大丈夫ですよ!」


「そう?
じゃぁ聞きたいことあるんだけどさ?」


今の私を見きったかのようににっこりと笑って言った。


「ハルちゃんは昔のアイのことを知らないの?」


いつもはおちゃらけてヘラヘラしてるのにこういう所はすっごく鋭いルカさん。


図星で少し口ごもる。


「いいづらいことだったんならごめんね?
でも、君よりさっきのジェーンって子の方がアイに詳しそうな感じしたから。」


「大丈夫ですよ。

そうですね。
みなさんが感じていた通りだと思います。」


この船の方々には何もかなわない気がする。


「私には小さい頃から4年前までの記憶がないんです。」


「つまり記憶喪失ってこと?」


ナオさんが少し苦しそうに顔を歪めた。


「はい。
原因は私には聞かされていなくてわからないんですけどね。

お姉ちゃんは絶対私にその事を話そうとしないんです。

だから私も気にせず日常を過ごしています。」


そう。
私には記憶がない分お姉ちゃんをよく知らない。

私が知ってるお姉ちゃんはここ数年の記憶の中のお姉ちゃんでしかない。