「だからね、あたしたち堂本堂って和菓子屋さんの苺大福で、

職人さんが変わった人で、

作った和菓子がよっぽど気に入ると名前つけて『我が子』扱いしたがるの。

それでイノセとゴトウとあたしとでつるんで、自分探しをしてみたらイノセは未来、

ゴトウは過去を知る能力があるって気づいたの」

「へぇー。真ん中にいるのがチナツちゃんで、こっちがイノセくんでこっちがゴトウくん?」

今度ボクも自分探しをしてみようかな。怪しげな能力の一つでも見つかるかも知れない。大福と喋れるとか。

「気づいたはいいけど、チナツちゃんの能力は?」

「あたしはバイリンガルなのよ。大福語と人間語を使えるの」

「それはおもしろいね」

大福語。

「でもおどろいたわぁ。人間語って言っても不完全すぎて、通じる人は滅多にいないの。

わかってくれるのは4,5才のコドモたちだけ、だと思ってたのに」

「のに?」

「あなた、いくつ?」

「5才」

「ギリギリね。」

でもそれが普通だとチナツ。

「たまーに、こどもの頃きいた大福語が

いつまでもわかっちゃう大人がいるみたいなのよ。

ウワサはきいてたけど、

オンナだってきいてたから男の人でびっくりした。

興味深いわ。帰れたら大福仲間に教えてあげたいな」

「あのヒトって誰?」

チナツは意味ありげにふくみ声で言った。

「あなたのお父さんになりたいみたいだったわよ。」

「ええっ!?だれ!?」

内心うれしさで心臓がはねた。

「あら、あなたも?」

さりげなく心を読まれている。

「あたしに隠し事はタブーよ。……モチロン、前田樫男ってヒト。」

――シオにぃだ。

「彼が堂本堂の和菓子にまつわるジンクスを教えてくれたのよ。

キョーレツに効くって」

「じんくす?」

「縁起のいいモノのこと。

……ってみんな思ってるけど、

実は『縁起の悪いモノ』って意味なの」