「大くんは、身体がとても弱いんです」

看護師さんは言った。

「なのに性格はやんちゃで負けず嫌い……

普通の小学校に入れたりしたら、何が起こるか分かりません。

幸いこの病院は小児科も充実していますし、

学校に遅れないぐらいには勉強だって教えられます」

「だから小学校いくのあきらめろ、と。

俺たちはあの子の親でも親戚でも何でもないよ?」

「でも国子さんの親友でしょう」

「…よくご存じで。」

指名手配でもされているのだろうか。

そういえば自分たちが病院に一歩入っただけで、

いっせいに振り向かれたような気がする。

「国子さんは決めかねていらっしゃいます。

宙ぶらりんが一番大君の不安をあおるんです。

あの子だって気づきかけています。

自分は小学校に行けないんじゃないか、って。

病院にも、ふつうとは少し違うけれども学校のような制度があって、

ちゃんと小学生になれるってことも、

入るなら入るで教えておかなければなりません。」

「大変だなあ。母子家庭の上にボウズが病かかえてちゃ。

俺だってわけわかんなくなってくるぞ。」

「……ほんまはね、どっちにするかなんてたいして問題やないねん」

兄弟は、うっとのけぞる。

看護師さんの雰囲気がいきなり変わった。

「……まさか」

「あんたらも相談に乗ったってや」

あるときはフリフリアナウンサー、あるときは看護師さん。

ダチ思いと変装上手は現役な彼女の名は。

「堂本 初江……!」

とりあえずと言われてカーテンの後ろに隠れていた国子も、そろそろと登場した。