風が…心地よい。

声を、かけられた。
「あんた、そんな所で何してるんだ?」
「わぁっ!?」
驚いた。こんな荒れ地に人が来るとは思ってもいなかったからだ。
「んだよ。人を化け物みたいに言うなよ。」
そう言って、私と同い年ぐらいの少年が言った。
長い…肩まである茶髪の少年だ。
前髪で、左目を隠している。
真っ黒な服を身に纏ったそんな少年を私は睨んだ。
「そ、そんなに怒るなよ。怖いなぁ…。あんた、家はどこにあるんだ?」
家なんて…ない。
だけどそんなことは言えない…。
返事できない…。
「もしかして、家がないのか?」
っ!!…図星だ。
私は俯く。
…はやく立ち去ってくれ。これ以上、私を穿鑿するな。

だが、少年は私の肩を掴んだ。な、なんだ!?
「まじかよ!?」

…何故そんな顔をする?
関係…ないのに。

少年は私に笑って言う。
「なら、俺の町へ来いよ!ここから歩いて7分なボズニアってとこだ。」
「いや、しかし…」
「いいんだよ!」
少年は強引に私の手を引いて走り出した。
…振りほどかなくてはいけないのに…振りほどきたくない。
「あ!あんた、名前は?」「ら、ラーナ・アルルエリ」
「ふーん。ラーナか。…俺はルアラだ!よろしくな、ラーナ!」