色とりどりの花々は、美しい、と思う。
季節ごとに移り変わる太陽の色や、風の匂い。
そのどれもが、本当に美しいと。


かつて灰色に見えた町並みは、今はキラキラと輝いて。


ここに居てもいいんだと、そう感じた。








『Un chat du bonheur』







レアがゆっくりと目を開くと、コーヒーのほのかな香が鼻腔をくすぐった。
朝か―…頭を巡らせ、時計を見ると午前7時。
少しだけ眠りすぎたようだ、と慌てて身を起こす。


掛け布団の上で丸くなっていたフェリクスが、にゃあと悲鳴を上げてベッドから転げ落ちた。


「あっ、ごめんね」


慌てて抱き起こすと、ゴロゴロと喉を鳴らしてレアの手を舐める。
レアはフェリクスの背を優しく撫でると、そっと床に下ろしてやった。


寝巻きのままでレアは部屋を見回す。
そこはかつてのアパートより広い、綺麗に整頓された部屋だった。

ベッドもあの頃よりも広くて、二人と一匹で眠ったとしても十分広い。
だが、目覚めたレアは一人きりだった。


ふと窓辺に目をやると、サボテンの花が咲いていた。
綺麗なピンク色の花が咲く―…いつか、彼がそう言った様に、小さなピンク色の花が咲いていた。


「おはよう、レア」