いつまでも続くものなんてないと


本当はわかっていた。


こうして生きている限り、何かが始まり、終わっていく。



それは喜びも伴うけれど




とても、痛い―…。








『Clair』








木枯らしが灰色の街を忙しなく駆け抜けて、もう秋の色が濃い空。
突き抜けるような青ではなく、どこか薄いこの色は、間もなく寒い冬に閉ざされる前触れ。


珍しく二人でアパートの部屋に閉じこもっていたレアとリュックは、フェリクスの遊び相手をしながらとりとめのない会話をしていた。


「…あ、そうそう」

レアが思い出したように、テーブルの上に置かれていたレターに手を伸ばす。
それは、今朝方ポストに投函されていたもので、彼女の故郷から届いたものなのだという。


「今週末、幼馴染のブリジットが遊びにくるんだけど、泊めてあげてもいいかな」

リュックはレアの口から他人の名前が出ることを珍しいと思いつつ、こくりと頷いた。

「俺、居ないほうがいい?久しぶりに会うんでしょ?」

「手紙でね、彼女にあなたのこと話したら、ぜひ会ってみたいって書いてあるから。居ても大丈夫だよ」

レアはそう言って、大事そうに手紙をテーブルに戻した。
その様子を見て、レアにとってブリジットという女性が大切な人なのだとわかる。

リュックは、レアが幸せそうで嬉しいと思った。


「駅まで迎えにいくの。あなたも一緒に来る?」

「いいの?」

「いいよ」

短いやりとりのあと、ブリジットが何時に来るのか、買い物は何時までに済ませるのかなど話し合うと、その日はお互い仕事へ出かける時間になった。