翌日は、予想に反して快晴だった。
途端に蒸し返す強烈な暑さに、フェリクスは呻きながら身体を起こす。
隣では、レアが安らかな寝息を立てながら眠っていた。

「相変わらずねぼすけだなぁ…」

起きてしまったものは仕方がない。
フェリクスはのそりとベッドから這い出ると、コーヒーメーカーをセットして窓を開けた。


時間を見れば午前10時。
とっくに平日の街は人通りもまばらになっていて、たまに通る車の排気音だけが聴こえてくる。


コーヒーが落ちると、レアが小さく身じろぎする音が聞こえてきた。


「ふぇりくす…?」

寝ぼけているのか、まだ夢の中なのか、はっきりしない声でレアが手を伸ばしている。
フェリクスはレアの傍まで行くと、レアの手をぎゅっと握った。

「どうしたの、レア」

「うう…コーヒー飲みたい…」

「まず起きないと」

フェリクスはレアを助け起こしながら微笑んだ。
ベッドの上で身体を起こしたレアは、やっと目が覚めてきたのかフェリクスの顔を見つめた。

「おはよう、フェリクス」

「おはよう、レア」

お互いに声を掛け合うと、フェリクスは自分の淹れたコーヒーをレアに差し出した。
レアはそれを受け取ると、満足したように一口飲んだ。

「今日どこ行こうか」

「お散歩でもいいよ」

いつまでもダラダラとベッドでそんな会話をし合う。
レアは少しだけ考えると、思いついた様に顔を上げた。


「ね、フェリクス欲しいものない?」

急に何を言い出すのかと、フェリクスは首を傾げる。

「どうしたの急に」

「だって、もうすぐあなたがここに来てから一年なんだもん。何かお祝いしようよ」

「えー、急に言われてもなぁ…じゃあ、レアは何かないの?」

逆にフェリクスが問い返すと、レアも困った様に首を捻った。

「うーん、改めて言われると困るなぁ…」

二人で暫し思案すると、唐突にフェリクスがあっと声をあげた。


「俺、欲しいものあった」

「え、なに?」