「高村さん。」

肩を怒らせて拳を震わせる佳乃に、セッテはそっと近付いた。


「もっと、力抜いたらええやん。」


小さな子供をあやすように、微笑みながら。

「頑張り過ぎや。もっと、皆に頼ればええねん。」

セッテの大きな手が、佳乃の肩に置かれる。
不思議と肩から、力が抜けた。

「ええ主任て、何や?
仕事が何でも一人で出来て、皆に優しゅうて、いつも笑顔でおったら、ええ主任なんか?」

「そ、それは・・・」

「ちゃうやろ。」

柔らかかったセッテの眼差しが、真剣なものに変わる。
佳乃が思わず彼の瞳に見入ってしまうぐらい、綺麗な光を宿していた。

「俺が思うに、キミは、ええ主任やったと思うで。」

信じろと言わんばかりの、強く真剣な眼差し。

「誰より頑張って、誰より仕事こなして。そら、多少きっつい言い方やったかもしれん。
せやけど、それに対して誰も反抗せんかったっちゅーことは、キミの言った事が間違っとらんからや。」

「間違いじゃ、無い・・・」

セッテはいつもの表情に戻って、優しく頷く。
恐怖で支配していたわけでは、なかったのだろうか。