恋心に気付く前でも、ときめいた。
何気ない言葉に、心があたためられた。
恋人が居ると聞いた時、嫉妬もした。

久し振りの大きな感情の揺れを、無駄にしたくない。

(大丈夫。きっと、強くなれる。)

祈るように、強く思う。

子供のように声を出して泣けたら、もっとスッキリするのかもしれないが、あいにくと声は出てくれなかった。
自分の大きく呼吸をする音だけが、妙に耳に残る。

止めたいのに止まらない涙。
全部流しきったら、また明日から頑張ろう。
成長のきっかけはもらったのだから、まだまだやれるはずだ。

一人きりの静かな玄関に、佳乃の嗚咽だけが響いた。