イベント会場を自分の目で視察するのは、もう何度目か。
部下に任せるだけでなく、自分の足で周り、自分の目で確かめたい。
その思いから、佳乃は企画に携わるようになってからと言うもの、イベント会場の視察は必ず自分の目で行うようにしている。

今回のイベントは一般向けのものだから、業者は来ない。
ならば、どこかのホールを借りるのでなく、デパートなどの催事場の方が入りやすいのではないか。

バッグと資料を持って、ビルを出た佳乃は歩き出す。
佳乃の少し後ろを、セッテがついてきていた。
気付いてもあえて声はかけず、佳乃は最寄りの駅へと向かう。

「何処まで行くんや?」

「駅前の大型百貨店よ。」

並んで歩くのに、ちっとも気分は浮上してこない。
それもこれも、先程会ったノーヴェのせいだと思ってしまう自分に、更に腹が立った。