一方セッテは、会社でノーヴェと出会ってからと言うもの、様子が少し変わった。
佳乃に対してではないのだが、周りの社員に対して、少し素っ気なくなったような気がする。

誰かに声をかけられれば、いつもなら1に対して3ぐらい返していた彼が、1に対して1しか返さないような、そんな些細なものなのだが。
笑顔でさえ、距離をおいているような印象を受ける。
特に誰も気付いていないようなのだが、佳乃は少し気になっていた。

デスクにつき、書類とパソコン作業を同時進行させながら、時折セッテを見る。
目が合えば微笑んでくれるが、真剣な横顔を見られるのも嬉しかった。
例えそれが一瞬でも。

浸っていた自分にカツを入れ直し、書類に目を落とすと同時ぐらいに、内線が鳴る。
それを取った女性社員が、要件を聞き終えて受話器を置くと、佳乃の方へ歩いてくる。

「高村課長、社長がお呼びです。」

「わかった、ありがとう。」

課長になってから、初めての呼び出し。
ありがとうと一言付け加えたことで、少しだけ驚いたような顔をした女性社員には、気がつかなかった。

佳乃は皆に一言告げ、急ぎ足で広報部を出る。
その後ろを当然のように、セッテが着いてきた。