「これ、オススメやで。」

悩む佳乃の横から、スッと手が伸びる。
顔を見なくても分かった。
外で待っているはずのセッテだ。

すぐ、肩が触れそうなそうなぐらいに、近い。
どうして追いかけてくれたのか分からないが、二人で並べることが素直に嬉しかった。

「…よく、使うの?」

渡されたものの、彼の顔を見られないのは、赤面している所を知られたくから。

「パソコン得意なヤツに教えてもらったんよ。俺も冷蔵庫入っとる。
値段も安いし、コストパフォーマンスっちゅーやつはええな。」

「じゃあ、これにしてみる。」

「なんや俺、押し売りみたいになってしもたわ。」

高鳴る心を隠して笑いながら、持っていた目薬を戻して、セッテに渡されたものを持ってレジに向かう。

「押し売りなら、いちばん高いものを勧めなさいよ。」

「せやなぁ。えらい良心的な押し売りになってしもたわ。困っとるかなぁ思たんやけど。」

「これも、“サポート”なわけ?」

「んー、サポートに入るんかなぁ・・・?どっちかっちゅーと、おせっかいかもしれん。」

可愛くない言葉しか吐けない自分が悔しい。
それでもセッテは顔をしかめることなく、一緒に笑ってくれる。

ほな、また外おるから。と、明るい声が聞こえた。

これを教えてくれるために、追いかけてくれたのか。

まだほんのり熱い顔が自然にゆるんでしまうのをなんとか隠しながら、佳乃は会計の列に並んだ。