”返すね!”じゃねえんだよ。返さねえ非常識がどこに居んだよ。
ああ、うぜえ。
「ばーか」
そう小さく呟いて自分の席に着く。
・・・あたしは、自分で認めるほど性格が悪い。でも、困ったことに無駄にプライドが高い。
だから、猫を被る。
普通に考えて、性格が悪い人間は嫌われる。だから、いい子を演じる。
まあ、そこんとこは上手くやってるし。
友達は、男女問わずいるわけで。
ナルシってわけじゃないけど、スポーツも、勉強も人以上にはできる自信がある。
当然努力はしてるけど。
顔もまあ、美人の部類には入るかなってくらい。
意地になって言うことじゃないし。
・・・、完璧な訳じゃないんだし。
ただ、いい子を演じるのは、
「おはよ~、いつ」
「あ、おはよう」
疲れる。
面白くもないのにへらへら笑って、何が楽しいんだ。怠いだけなのに。
嫌気がさす。
かと言って素、出したら嫌われるし。
好かれる必要もないけど、嫌われて根も葉もない噂を立てられるのはごめんだ。
てか、何あいつ”いつ”って。勝手に略してんじゃねーよ。あたしの名前は維月だけど。
”き”まで言えよ。
「維月ありがとお~、まじ助かった!」
「ううん、全然」
わかりやすい、こいつ使えるなって笑顔でノートを渡してくる。
それを軽くイラつきながら、それでも笑顔で相手に極力触れないようにして受け取る。
人に触れられるのは嫌いだ。潔癖って訳じゃないけど人の肌からは、不快感しか感じない。