「一ヶ月…か。逆に要らない時間だねえ。」


監視者の視線が行き届かない秘密の隠れ家。
そこでシンメイは一人煙草を口に咥え、過去の自分に視線を向けた。



──なあ、シンメイ君。お菓子奢ってよ。


え、嫌だよ。


──何でだよ?お前金持ちだろー。友達に菓子くらい良いだろう?


友達…か…。


「遊びもしないで、菓子が欲しい時だけ御願いするのが、友達かよ…。」


夕暮れの空は、学校終わりの嫌な思い出を脳裏に過ぎらせ、吐き出した紫煙は虚空に消えた。
耳には人の啜り泣く声と、怒鳴りつける監視者の声が響き渡る。
しかし、体は既に助けに行きたい心の言う事は聞かずに、我が身可愛さに動こうとしない。


「俺は…。俺は…──。」


自身に問い掛ける言葉は何度口を開いても紡がれる事はなく、時だけが過ぎていくだけで、答えは出なかった。