「私は今まで他の家族への劣等感と、身を汚して手に入れた金を大切に抱えて自己満足に浸って…、それの繰り返しだった。」


「誰だってそうだろ?劣等感はどんなに完璧な人でも一度は感じるし、自己満足しなければ、やってられない時もあるさ。」


「…でも、私は…。」


空から雨の滴が降り注ぎ、手に持った紙幣が濡れていく。その滴で汚れは流れ落ちはしないだろう。
崩れかけた自分の心から零れた弱音を誰しもが感じる事と紡ぐウェンの言葉は、嬉しくもあるが、逆に自分の犯した過ちはそんなに軽いものではないと、メイフェイ自身が不安を掘り起こしていた。
ウェンは後ろからでも分かる程のメイフェイの不安、後悔、哀しみを癒してあげようと抱き締める力を強めて、静かに息を吐き出した。


「俺は…、凄い後悔してる。」

「え…?」


「一番大切な人間だと分かっていたのに…。止めなきゃいけないと分かっていたのに…っ!…俺、軍人になろうとした理由は、親父の影を追うだけじゃないんだ。」


「…っ…。」


徐々に強まる雨の中で、二人は動こうとしなかった。
今動けば、この機会はないと分かっていたから。


この機会が、全てを打ち明ける時なのだと。