──…淡き昔の夢は覚めれば、この時の事を忘れてしまうだろう。
楽しい夢は川の様に直ぐに流れ去ってしまうが、悪い夢は水溜まりの様にずっと頭の中で残り続ける。
久々に見た夢が悪い夢、なんて最悪な気分なのだろうか。

「……、はあ…。」


自室で一時の仮眠をとっていたRは、ゆっくりと瞼を開いて頭の中に残る残像に息を小さく吐き出し、寝返りで軽く皺の付いたシャツに付着した埃を指で摘み払いながら、ベットから降りて椅子に深く腰を掛ける。
明かりのない部屋で通信機器を起動させれば、青白い光がRの肌を不気味に照らした。

「…御機嫌いかがですか?W…。」


「んー?何かと思えば日本の指揮官様か。今お楽しみちゅーなんだが?」


画面の向こうに映し出されたのは上半身裸の栗色の髪に小太りな男性が嫌がる女性をまるで我が物の様に犯す光景で、息を荒く吐き出しながら楽しみを邪魔されたのが気に食わないのか、その不機嫌さを声に滲ませながら言葉を返した。


「…、要件だけですので続けながらで構いませんよ。貴方の支部…、つまり中国支部に隠れて身を潜めているレジスタンスが動き出している様です。」


その状況にRは反応を示さずに要件だけを淡々と紡ぎ、Wに忠告するも言葉は女性の放つ嫌悪と快感の混ざり合った喘ぎ声に掻き消され、W自身も聞く耳に持たず己の欲望を女性にぶつけるのに夢中で獣の様に絡み合っていた。