-Lost Japan-失われし愛国

「蓮君、ちょっと良いかしら?」


扉からのノックの音に驚いたのはアリッサだけでなく、まだ理由すら思い付いていない状況の蓮哉も表情に表す事はせずとも、焦りを感じた。
返答を待つ前にノブを回す音が響き、開いた扉から軽い靴音を鳴らして静流が中に足を踏み入れ、視界の先にいたアリッサを敵対している組織とまだ知らない為か、巻かれた包帯を見つめながら心配そうに首を傾げる。


「怪我をしてるの?…大丈夫?」


「静流さん、その子は…。」


「あ…む。」


「静流。その子は怪我の後遺症で、一時的な記憶と言語に障害が起きているの。」


問い掛けた言葉に回答をし様と口を開くが、紡がれた言葉は思って紡いだ言葉とは異なるもので、アリッサは思う様に動かない口に悔しそうに服の裾を握り締めた。


「蓮君、この子は一体…。」


「怪我をしていたので、俺が独断で連れて来ました。名前はAlyssa=Chain。日本政府の人間で設計図を持っていた少女です。」


「…蓮君。それはどれだけ危険な事位、貴方なら分かる筈よね?」


さり気なく告げられた真実に遥香は驚いて、咄嗟に静流の反応を見るも、静流は驚きの表情は見せずに冷静を装い、言葉を紡ぐ。
その言葉は重く響き渡り、場も自然に空気が沈みだしていき、沈黙が場を埋め尽くした。


「重々、分かってます。全責任は俺が取りま…っ!」


「貴方だけの問題じゃないのよ…!」


蓮哉の言葉が静流の怒りに触れたのだろう。
怒りを映した瞳が蓮哉を捉え、片手は自然に蓮哉の胸倉を掴み長い髪をなびかせながら、静流は怒りを滲ませた言葉を紡いだ。