視界の先は真っ暗な闇の中で、体は動かず恐怖が体を埋め尽くしていく。


肩に響く痛み。


私はどうしたのだろう?


私…?


体全体に強い寒気が駆け巡り、呼吸すら止まりそうになる。


何故、私は名前すら分からないのだろうか?


普通、自分の名前をうっかり忘れてしまう人間なんて居る筈がない。


喪失感に自然と混乱が精神を乱していき、警戒心を高めつつ薄く開いた瞳には二人の男女が映る。


自らの危険を覚悟しては、ゆっくりと呼び掛ける為に二人に向けて口を開いた。