女王さまの憂鬱

そして、ついに先輩はかけにでる。

夏を前に、彼はさくらに思いの丈を吐露した。これは後日さくらに聞いたことだ。

何度も言うが、さくらは6年間女子校で蝶よ花よと育った女だ。

女子校と一口で言っても、特に彼女の通った学校は俗に言う「お嬢様学校」と呼ばれるもので、本格的に男子との接点はなかったのだ。

だから、わたしにとっては驚くことにこれがさくらにとっての初めての告白だった。

彼女にとっては晴天の霹靂だっただろう。

どんなわがままも聞いてくれて、甘やかしてくれた兄のような先輩。そんな先輩がそのように自らのことを思っていたなど、彼女にしては想定外のことだ。

わがままを聞くのも、何をしても大目に見てくれるのも、それはすべて先輩が好意をもっていたから、とは彼女の中では結びつかないのが悲しいところ。

恋愛事情は少女漫画で学んだ、と今でも豪語するさくらは、咄嗟に断り文句を探し出すことができず、思わず

「あ、お願いします」

と一言答えてしまった。

それが、先輩をどれだけ喜ばせてしまったかは、計り知れない。

こうして、期せずして初彼を得てしまったさくら。


けれど、わたしはもちろん知っている。

この恋愛ごっこは長続きはしなかった。

するはずもない。さくらにはその気は皆無だ。

だから、先に言っておこうと思う。

これは、たったの二週間で終わるのだ。