「……そうだ。オレの最後のわがまま、聞いてくれる?」

「えっ?」

黙ってスカートをいじり続けるわたしの姿を見て、瞬にはすでにわたしの中の気持ちがお見通しなのかもしれない。

いつも、心地よいタイミングでわたしに声を掛けてくれる瞬。

……わたしはちゃんと、瞬にお返しできていたんだろうか。

いやになるほど、自分のしたことの重さに責め続けられる。

自分の顔と、ガラスを挟んで目が合うと、思わず顔をしかめた。


「美人が台無し。

……そんな不安そうな顔しないで。


すぐ、済むから――」




信号待ちとは名ばかりの、車のいない交差点で……瞬は最後の口づけをした。

ありがとう、とつぶやく瞬の口元を見ていたら、さっきまでは音沙汰無かった涙腺が急に壊れ、涙で景色が見えなくなった。