この時間は、駅へ向かう人でいっぱいだ。

さわやかな朝の風を髪になびかせながら、わたしは人の流れとは反対の方向へ向かって歩いている。




松原さんとの時間が増えるたび、わたしの心が少しずつ満たされていくのを実感していた。

同じ分だけ、罪悪感をも感じるのが辛いけれど、それでもわたしが求められていると感じられる幸せを手放したくない。


寝癖のついた松原さんはちょっと恥ずかしそうに、髪をなでつけながら目覚めのキスをした。

何気ない仕草だけれど、会社のみんなが知らない松原さんをこうして独占していると思うだけで嬉しいような怖いような複雑な気持ちになる。


「女の子だし、昨日と同じ服で会社行きづらいよなぁ。どうする?」


口の周りを泡でもこもこにしながら歯磨きをする姿があまりにかわいらしくて、思わず笑みを浮かべた。