急に、昔話が始まった。 残念ながら、「昔々、あるところに…」では始まらないけど。 「俺が龍太と喧嘩したときだった。俺、すごく怒られて、腹立ってさ。そしたら親父に連れ出されて……今から行くところが、そんとき行ったところなんだ」 私は何も言わなかった。 「そこ、星がきれいでさ。嫌なこととかぜーんぶ忘れられるんだ」 「そうなんだ…。じゃあ、私も、忘れられるかな…」 父さんが死んだこと、 瑛太さんが死んだこと、 七帆が私の母親だってことも 全部。