【完】三つ子のヤクザと狼娘 巻ノ参





 急に、昔話が始まった。



 残念ながら、「昔々、あるところに…」では始まらないけど。




「俺が龍太と喧嘩したときだった。俺、すごく怒られて、腹立ってさ。そしたら親父に連れ出されて……今から行くところが、そんとき行ったところなんだ」




 私は何も言わなかった。




「そこ、星がきれいでさ。嫌なこととかぜーんぶ忘れられるんだ」



「そうなんだ…。じゃあ、私も、忘れられるかな…」





 父さんが死んだこと、



 瑛太さんが死んだこと、




 七帆が私の母親だってことも




 全部。