奏太SIDE



 俺はため息をついた。


 まだ、あの戦いのときのことが脳裏にくっきりと鮮明に焼き付いている。


 娘にナイフを突き刺した、七帆。



 地面に飛び散った、鮮血。




「くそっ…」



 俺は目を閉じた。



 目を閉じたら閉じたで、今度は花蓮の悲鳴と、瑛太の死に顔が浮かぶ。




「…瑛太…」




 生まれたときからずっと、一緒にいた弟が、俺の恋人を庇ってそのせいで死んだ。その事実が焼印のように俺の胸に焼き付いている。