少し泣き止んできた時に義之とお母さんが来て


「舞っ」

お母さんは私を見て、駆け寄ってきて抱きしめてくれた。
私はまた抱きしめられたことによって泣き出してしまった。


「舞…もう泣かないの」

お母さんは優しく頭を撫でてくれた。

「…でもっ!私のせいでお父さんがっ」

「お父さんは大丈夫だから」


お母さんもたぶん不安なはずなのに、私を抱きしめながらそう言ってくれた。


「ごめんなさい。お父さんとお母さんの結婚記念日なのに…私のせいでごめんなさい」

「謝らなくていいよ。舞が無事で良かったわ」


お母さんだってお父さんのこと心配なはずなのに、私が泣き止むように優しい言葉をかけてくれる。


お父さんが手術室に入って、どのくらいたったかわからない。
目の前の扉が開いた瞬間、お母さんはお医者さんに近付いて、いきなり泣き崩れた。
その瞬間、私の目の前は真っ暗になった。



私の目の前が真っ暗になったのは、泣き崩れたお母さんを見て気を失ってしまったからだと、気付かされたのは、目を開くと自分の部屋の天井が見えたのと、ベットの中にいるのがわかったから。
横を見るとずっと手を繋いでくれていたらしい義之がいた。


「…ま…い。ごめんね。」

寝ながら私に謝る義之。

「なんで義之が謝るの…私のせいで…私があんなところでいきなり走ったから…だからお父さんは…」

また涙が頬を伝う。

「舞また泣いてるの?」

いつ起きたのかわからないけど、義之が声をかけてきた。

「舞…俺がプレゼント買いに行こうなんて言ったから、おじさんは…ごめん。本当にごめん」

「義之は悪くない。私がいけないの。私が…」


お父さんがいなくなってしまったことに、目を開けたことでわかってしまった。私があんなとこで走って横断歩道に出なければ…私なんかいなければ…お父さんはいなくならなくて済んだのに…。


この日は泣き止むことができなかった。
ずっとその間は義之がそばにいてくれた。