多田ちゃんが教室から出ていくと、教室が一気に賑やかになる。
体育館に向かう人もいれば、制服を正しく着直し、ピアスやネックレスを外す子もいた。
私たちが通う学校は普段は校則厳しいとかないけど、始業式とかちゃんとした式があるときだけは厳しくなる。

「舞?ネクタイは?」

私がネクタイをしてないことに気付いた多磨樹がそう言ってきた。

「あ…」

私は遅刻しちゃうって焦って、急いでいたせいでネクタイを忘れてしまっていた。

「俺の使いな」

そう言って、多磨樹は予備のネクタイを持っていたらしく、カバンから取り出した。

「ありがと。けど、なんで予備のネクタイ持ってきてたの?」

「舞みたいに義之も忘れたりすることがたまにあるから、一応持ってきてた」

「準備いいね」

「多田ちゃんは怒ったりしないけど、指導室にいる先生なんかはうるさいだろ?」

「そうなんだよねぇ」


他愛なく話ながらネクタイをしようとするけど、ぶきっちょな私は上手くネクタイがしめれなくて、何回もやり直していると、義之が近寄ってきた。

「ホント舞はネクタイしめるの苦手だな。貸してみ?」

そう言って手を出してきた。
義之にネクタイを渡し代わりにやってもらった。

「ごめんね?ネクタイってホント難しくて…」

「まぁ、女はネクタイすることなんて、ねぇーから仕方ねぇよ」

さっきっからずっと考えていたこと…何で家に来た時の義之の態度、話し方…学校に来た時の態度と話し方が変わってることに、ふと疑問に思った。

「ねぇ義之」

「ん?」

体育館に向かってる途中だったけど、歩きながら聞いてみることにした。

「さっきっからずっと考えてたんだけどさ、家に来た時と、何で態度も話し方も違うの?」

「あー…おばさんにさ、朝ご飯食ってるときに言われたんだ」

「なにを?」

「もうそろそろ、ちゃんと男らしくしなさいってさ。」

「男らしく?」

「そう。話し方がまだまだガキだって」

「そんなことお母さん言ってたの?」

「まぁ、俺もそろそろ甘えた感じはダメかなって思ってたからさ」

「ふーん。それでなんか違う感じがしたのか」

「まぁ、話し方とか違っても俺は俺だし?」

「まぁね」


私の隣で会話を聞いていた多磨樹は
「今さら?」
って笑いながら言っていた。