俺は、何杯目かいっている間にビルはそれ以上に飲んでいた。

『ミッシェルはいい女だった』

 そう愚痴をもらし始めていた。ビルの顔は真っ赤になっていた。

 いつもより飲む勢いが増していた。

『ミッシェルはいい女だよ、なあそう思わないか?』

 ビルは俺に向けて赤い顔を伸ばして言った。

『ああ・・・』

 俺は相打ちをうった。ビルは顔をニンマリしてそのまままたグラスの酒を飲んだ。

 ビルの彼女だった、ミッシェルとは何回か会ったことがある。

 俺から見てもいい女性だった

 ビルにはとても不釣合いな女性である。付き合ってのかが不思議仕方がなかった。

『ミッシェルの奴いきなり顔を引っ叩いて、別れるというんだぜ』
 ビルはグラスを一気飲みしながら言った。

     完全な自棄酒だな

 おれは思った。ビルからは些細な痴話喧嘩でこっちから振った。と聞いたが今回の愚痴で向うから別れ言ったのが分かった。

『おい、ビルその辺にしとけよ。明日起きられなくても知らんぞ』

 俺はビルをたしなめた。

『ああ、分かってる。分かってる。俺はミッシェル見たな女とは不釣合いなんだ。お前の言う通り、女神は逃げたんだよ』

 ビルはそのまま俺の飲みかけのグラスを取り上げ残りの酒を一気に飲んだ。
『すごい荒れてますな、今日はこのぐらいにした方がいいかもしれませんよ』
 マスターがビルの状態を見て、苦笑しながら言った。

『そうします。ではマスターお金』

 そう言いながら財布からお金を取り出した。

『ビル帰るぞ』

 と俺は立ち上がった。
『もう行くのか?』

 待ってくれとビルも立ち上がったが、足元ふらついていた。

 俺はビルの肩を持ちながら店のドアに向かった。

『運は両天秤に掛けられてますよ。悪い方に傾けてたら次は良い方に傾きますよ』

 マスターが後ろから言った。

 俺は首を後ろに回してマスターにニッコリ笑いながら店のドアを開け