ドアの鈴がなった。俺達は近くにある行きつけのパブに入った。

 飲んでいい気分になる時間だが、客は疎らだった。

 俺達はカウンターに座った。

『お、いつものお二人さんかい。いらっしゃい』

 マスターがカウンター越しから来た。

『ああ、マスター相変わらず不景気だな』

 俺はカウンター席から店の周り見た。

『ああ、まあな』

 マスターは少し苦笑しながら言った。

『で、今日はまたビルの方かい奢りは?』

『いや今日は奴だよ』

 ビルは小さく笑いながら言った。

『一番安い酒で』

 俺は少し怒気を混ざらせながら言った。

『おや、珍しいな?お前さんが今日は奢りかい』

 そう言いながらマスターは俺の言った一番安い酒のボトルを取り出した。

『日頃の行いがよくてね、最近になって運の女神はこっちに気づいたのさ』

 ビルはマスターから酒の入ったグラスを貰い口をつけた。

『何が運の女神だ?逃げられたくせに。本当の女神に』

 俺もグラスを口につけながら言った。

『俺の方が振ったんだ』

 ビルはそのまま一気に飲み干し、

『マスターもう一杯』