「梨乃、クレープうまかった?」
「うん」
「今度また食いに来ような!」
「やだ。また遅くなる」
現に、今は夜の7時半。
クレープを食べるだけなのに、一体何時間かかってるんだ……。
「ごめんごめん」
祐は悪びれもせず、にこにこ笑ってる。
祐が笑ってるのはいつものことだけど。
「家に着くの、8時過ぎちゃうなぁ。梨乃、家に誰かいる?」
「いない」
うちは、両親が共働き。
父親はどっかのお偉いさんで、母親は水商売。
母親って言っても、3人目だけど。
その事情を知ってるから、祐は心配しているようだ。
「別にいつも一人だから、平気」
「でも夜ご飯、ちゃんと食ってないだろ? 梨乃のことだから」
……。
図星で答えられなくなって、俯く。
「うち来る? お袋が梨乃に会いたいって」
「でも、突然行くのはさ」
「お袋がおいでって言ってたんだ。駄目?」
祐のお母さんの性格は、よく知ってる。
言い出したらてこでも譲らない。
「じゃぁお邪魔しようかな」
「うんうん、そうしてよ!!」
というわけで、祐の家に行くことになった。
祐の家、久しぶりだな……。
