「……もう別れてます…」
拓也が先輩のお兄ちゃん。
そういえば同じ名字。
それにびっくりしながらも、
わたしは答えた。
「は?別れてんのかよ。
あーあ、じゃあいいや。
帰っていいよ」
先輩が素っ気なく言った。
「え…?」
わたしが茫然としていると
「俺、兄貴が嫌いなの。
何でも完璧でさ…
せっかく兄貴のこと
見返してやれるって思ったのに。
じゃなきゃお前みたいなの
相手にしないっつの」
説明しないと
わたしが帰らないと
思ったのか、先輩は
ヘラヘラ笑いながら言った。
そんな…
「ひどいです…」
わたしは力なく言って
部屋のドアに手をかけた。
「てっきり昨日の奴が
ばらしてると思ったけど」
先輩のそんな呟きを
背中で聞いて、わたしは先輩の部屋を出た。